海の見える街

フランス・フランス語好きの社会人受験生による備忘録。2017年春ニース語学留学・プロヴァンス地方一人旅の記録、短期留学後の日常、長期留学に向けてのあれこれ。「自分が楽に生きられる場所を求めたからといって後ろめたく思う必要はありませんよ。サボテンは水の中に生える必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。シロクマがハワイより北極で生きるほうを選んだからといって、だれがシロクマを責めますか」(梨木香歩「西の魔女が死んだ」)

緑の街、モンペリエ

モンペリエ・サン・シャルル駅近くの公園。まぶしい陽光を浴びて、木々の若葉がみずみずしい。乾いた風が強く吹く。陽のあたる場所を歩くと汗ばむ陽気。日本では初夏の日々があまりにも一瞬で過ぎてしまうことを改めて思い出す。
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公園の中心にある苔むした岩から霧状の水が噴き出している。雲ひとつない空に細かな水の粒がきらめいてうつくしい。
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木漏れ日が揺れるベンチに座り、マルセイユで買ったエヴィアンを飲む。汗がすうっと乾いて涼しい。

時計を見ると16時半。公園では老若男女がそれぞれに好きなことをして過ごしている。スポーツウェアにサングラス姿のマダムは芝生で休憩。おばあちゃんたちはベンチに並んでおしゃべり。イヤホンをしたストリート系ファッションのお兄さんは誰かと待ち合わせしているのか、公園の出入り口をちらちら見ながらスマホを操作。私は観光客感を丸出しにして景色の写真を撮る。

 

物や風景の撮影のためにスマホをかざしているとこちらの人は生ぬるい笑いを浮かべるので、目が合うと(たぶんお互いに)ちょっと恥ずかしい。確かに、日本人は食べ物やら何やらすぐに写真に収めたがる(他の国より自撮り率が低い)って言うよね。言わないっけ。
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街のそこかしこにローマ時代の面影。旧市街に行きたいなあ、コメディ広場…と迷うも、今回ここに来た主たる目的はモンペリエ第3大学の校舎の見学であること、スマホのバッテリーが残り少ないことを考えて、今日はもうホテルにチェックインすることに。モバイルバッテリーは重いのでニースに置いてきた(何のための「モバイル」バッテリーなのだ)。

 

ホテルの最寄りまでトラムを使うか迷い、せっかくの機会なので徒歩で移動。およそ3km、GoogleMapに指示されるまま、てくてくてくてく。日陰が少なくて暑い!空気が乾いているせいで汗だくにはならないけれど。ニースを出るときにヒートテックを着てきたことをちょっと後悔。

 

市内でもマイナーな地区に宿を取ったおかげで住宅街を歩くことができた。生活の場としては、うーん…。トラムが走る大通り沿いやそこに近い場所にはカフェも飲食店も生活雑貨の店もあり、街並みがきれいで開放的かつ人の流れがある。でもそのエリアを離れると人通りが極端に減る(昼日中でも、同じ通りを歩いているのが自分しかいないこともざらにあった)。壁の落書きが増え、(差別的な言い方をするなら)スペイン語圏系統、南米系っぽい顔立ちの男性たちがたむろしている。大人も、高校生くらいの若者も(たまたまなのか、女性の姿は見なかった)。話し声を聞く限り彼らの母語はフランス語だと思うけれど、生活エリアには人種的な偏りがある?

だぼだぼの洋服を着た10代後半くらいの男の子たちがフランス語で、おそらくはとある英語話者を話題に上げ、話し方を馬鹿にして笑っていた。通りの反対側だったけれど居心地が悪くて、足早に離れた。

 

私自身はフランス、というか南仏に来てから、人種や言語的な意味でじろじろ見られたことは一度もない。アジア系の人間→だいたい観光客→お互いに深くは干渉しない関係だから?

 

そんなこんなでホテルに無事チェックイン。受付のマダムがとても親切だった。たどたどしい私のフランス語を聞いてもずっと微笑んで相槌を打ってくれ、ゆっくり話してくれた。私が、理解できない…という表情をしたところは、部分的に英語で言い換えて助けてくれる。ほんとうに優しい。

 

誰にも気兼ねしなくていい空間は最高。バッテリー残量が15%を切ったスマホを充電しつつ、この旅のいろんな疲れをベッドに横になって癒やす。iPodの機内用プレイリストをシャッフルして聴きつつ、これまでとこれからの人生についてちょっと考える。今まではただ聞き流していた英語やフランス語や日本語のいろんな歌詞が深く沁みて、仰向けのままぼろぼろ泣いた。

 

何か夕飯になるものを買いに行くか外に食べに行くか迷い、しかしホテル周囲の治安レベルや心身の疲れを思うと動くのが億劫で、だらだらとブログを書いているうちに日が落ちて外出するタイミングを失った。時間の感覚がなくなるほど昼が長いのに暗くなり始めるとあっという間で、21時を過ぎた今はもう真っ暗。今夜はこのままホテルで。飲食店を探し、拙いフランス語で食べ物を注文し、お会計をしてホテルに帰ってくる気力はない。日本で言うところのコンビニエンスストアはこの付近にはなさそう。

 

しかしまあ、チープな言い方だけれど、生きててよかったなあ、と思う。好きな国で好きな言葉を聞き、話し、きれいな景色を見て太陽をたっぷり浴びて風に吹かれて、自分の足で歩いて。人生で一番今が楽しいし、思いきり羽を伸ばしている。

でもコンタクトレンズを外したり化粧を落としたりするのも億劫なくらい疲れてもいる。

 

明日の朝食はホテルの広間で。その後は…当初の予定通り大学へ?GoogleMapによると徒歩経路は「安全に気をつけましょう」とのことで、やっぱりこのあたりは治安に問題が…?!「タクシーを呼んでほしい」とフロントのマダムにお願いしたら呼んでくれるのだろうか。でも変なタクシーが来ちゃったらどうしよう…。

 

まあ、明日のことは明日考えればいっか。