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海の見える街

フランス・フランス語好きの社会人受験生による備忘録。2017年春ニース語学留学・プロヴァンス地方一人旅の記録、短期留学後の日常、長期留学に向けてのあれこれ。「自分が楽に生きられる場所を求めたからといって後ろめたく思う必要はありませんよ。サボテンは水の中に生える必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。シロクマがハワイより北極で生きるほうを選んだからといって、だれがシロクマを責めますか」(梨木香歩「西の魔女が死んだ」)

春は思春期の少女のように

自律神経の回路がうまく繋がらないまま早くも帰国4日目。見事、昼夜逆転!熱、下がるどころか上がる!月経、予定より1日早く来襲!

というわけでせっかく穏やかなお散歩日和、お花見日和だというのに、家事を終えたら各種常備薬を飲み、布団に潜った。家事手伝い業の成せる技。

 

申し遅れましたが社会人受験生を自称する私、実際はそれだけでなく家事手伝い・英語塾講師(お給料はいただかずお手伝いさせていただいている)・オーバーワークで心身を壊して7年近い半引きこもりの半ニート・日本社会不適合者・女であることを楽しんでいるけれど女であることに苦しむ自縄自縛で自己嫌悪感の強いフェミニストなど、実に多彩なライフスタイルを織り交ぜて日々実家を拠点に暮しております。

 

14時にアラームが鳴るはずなのできちんと目を覚まし、某所へ電話。帰国の報告がまだの人へ連絡。頼んだぞ14時の私。

 

帰国して以来寝込み気味なので、桜や春の花々の写真をまだ撮っていない。

JeannetteやMarcたちに、日本の春について教えたい。

日本の春の天気はとても気まぐれで、少し晴れたかと思えばすぐ雨が降ること。だから毎日、着る服に困るということ。春という季節はまるで思春期の女の子のようだということ。

桜の開花が春の訪れの一つであり、人々の楽しみであり、希望であること。数百年前の和歌の数々にも詠まれたほど、この国の人間たちは桜を愛して止まないこと。桜の下でどんちゃん騒ぎをするくせに、桜をモチーフにしたラブソングは旅立ちや失恋などせつなさや哀しみを歌ったものが多いこと。

なぜなら、私の意見では、桜は堪えに堪えた涙の粒が一気にあふれ、こぼれるように、はらはらと散るから。その寸前の瞬間や散っている最中の姿こそ、胸が締め付けられるほどにうつくしいから。

桜の花びらが散る速さは赤ちゃんがハイハイする速さとだいたい同じであるらしいこと。桜の花びらの落下速度をモチーフにした新海誠監督「秒速5センチメートル」という美麗なショートフィルムがあって、仏語字幕や仏語吹き替えのものもあるから、日本のアニメーション作品やビターな恋愛映画に興味があったら観てほしいこと。

桜の開花時期に気まぐれに寒さが訪れることを「花冷え」(日本酒の温度にもこの名が付けられている)、桜の花を散らしてしまう雨を「桜流し」、桜流しによって水面に落ちた花びらを「花いかだ」と呼ぶこと。このように日本では、桜のつぼみがほころぶ前から花が散ってもなお、この繊細で控えめな色と香りの花を愛で通すこと。

et cetera, et cetera...

 

春や桜について思うことはたとえ日本語であろうと、どんなに言葉を尽くしても尽くしきれない。私のフランス語はどの程度、こんな複雑な気持ちを伝える道具になりうるのだろう。今はほんのひとつまみでいい。どうか私の感じる日本の春が、桜の花の感覚が、フランス語を話す人々へ少しでも伝わりますように。